八丈町長 山下奉也
令和6年3月1日 第一回八丈町議会定例会
令和6年第一回八丈町議会定例会の開催にあたり、私の町政に関する所信の一端と施策の概要を申し上げ、議員各位ならびに町民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
はじめに中之郷埋立処分場、2月2日の出火に際しましては、町民の皆様に多大な不安とご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。長期間にわたり、消防団や警察署、関係機関の皆様には消火活動にご尽力いただきましたことに深く感謝しております。
今後、中之郷埋立処分場での受け入れは困難となり、クリーンセンターなどでの受け入れ基準を超える伐採木につきましては、有料となりますが、現在処理業者と受け入れ態勢を準備しております。町民の皆様に大変ご迷惑をおかけしますが、受け入れ態勢が整い次第、改めてご案内させていただきます。
さて、これまで3期12年での町政の取り組みにつきましては、議員の皆様、町民の皆様のご支援とご協力を賜り、各分野において成果が出てきたと考えておりましたが、新型コロナウイルス感染症により、一次産業や観光業など多大な影響がありました。
新型コロナウイルス感染症対策では、地方創生推進交付金を活用し、影響を受けた事業者の方々への支援や、経済対策として水道料金の補助を実施しました。
5類へ移行されたことにより、最も影響の大きかった観光業に関しては、コロナ禍前の観光客数に戻りつつあります。
コロナ禍後の新しい島づくりのために職員と一緒になり取り組んでいきます。
「避けられない大きな課題である人口減少問題への歯止め政策」として、地場産業である農業・漁業の振興を図り、観光産業などの島内資源を結び、後継者対策として新規就業者への育成支援、農業・漁業の基盤整備支援、観光業では、八丈島の自然、食、文化、伝統など特色を活かした観光振興により、将来の担い手にまちづくりを託せるよう進めていきたいと考えております。
来年度は町制施行70周年の記念の年となります。町民の皆様が様々なイベントなど参加していただき70周年を一緒に祝い、盛り上げていきたいと思っております。
また、今年は名誉町民である團伊玖磨氏の生誕100年であり、70周年事業のメインイベントとして團伊玖磨氏が残した音楽を町民の皆様に広く知っていただくため、記念公演を実施します。
これまで、様々な施策を駆使し、議員の皆様、町民の皆様と共に取り組んできたところではありますが、人口減少、少子高齢化、財政状況など、本町のおかれている状況は、依然として厳しい状況です。
そのような中、自治体、民間企業においても人口減少社会への対応を迫られています。そのため、適応政策としてデジタルトランスフォーメーション(DX)を今、八丈町が推進している「東京宝島サステナブル・アイランド創造事業」で活用し推進することで、八丈町も現代社会の流れに遅れることなく、未来の八丈町を担う世代へ繋げてまいりたいと考えております。
また、近年の災害は激甚化しており、能登半島地震におきましても、甚大な被害をもたらしました。八丈町として町民の皆様の生命・財産を守るため、災害への備えは大きな課題であり、減災を意識しながら、「自助」「共助」「公助」を踏まえ防災計画を確認、改善し、防災態勢を更に充実させるため、積極的に事業展開を図ります。
近年は町職員の退職者もあり、定員不足となっております。それぞれの理由がありますので難しいところはありますが、今後は退職者との時間を設け、理由などを把握し、改善できるところがあれば対応していきます。
今年度は採用者の年齢の見直しや経験職採用も取り入れ、採用者も増えております。年齢層の高い職員も増え、今後はこれまで以上の職員間のコミュニケーションが必要であると考えております。コロナも5類に移行され、コミュニケーションもこれまでより取りやすい環境になりました。引き続き職員採用に取り組むとともに、コミュニケーションを取ることで、役場内部の立て直しを図ります。
また、退職者を減少させることが最も重要な課題であると考えており、役場内部の職員間の意見を集約できる態勢づくりに取り組みます。
そして、八丈町基本構想で掲げております「住民が主役の町」「島を生かす町」「歴史と文化を生かす町」「クリーンアイランドを目指す町」の4つの柱を基本方向とし、「持続可能な開発目標」(SDGs)の考え方を取り入れ、「ともに支えあうあたたかい町」を将来像として定め、町民の皆様と行政が協働することで新たなまちの魅力を創りあげることを目指してまいります。
この基本構想に沿って、「都市基盤」「生活」「文化・教育」「産業」「行財政・機構」と項目を分けて、施策を分類しておりますので、この項目に従い主要な施策について申し上げます。
基本構想の「都市基盤」の項目では、「独特の気候、風土や人の営みなどの特性に立脚し、みどり豊かな町で住み続けられる環境」の整備について示しています。
事業最終年度となる東京宝島サステナブルアイランド創造事業は、総額2億9千6百万円を計上しており、みずほグループと連携し、デジタル化による新たな取得可能なデータと既存データを分野横断的に集約・統合・分析できる環境整備に向けたデータ連携基盤の構築と、今後の展開も見据えた防災DX・観光DX・行政DX等、各種施策を実施していきます。
移住定住事業の促進を図るため、関係機関と連携し、「多摩島しょ移住定住相談窓口」や新規採用予定の移住定住担当地域おこし協力隊員を活用するなど受け入れ態勢の強化に取り組みます。
地震・津波・風水害など、多様化する自然災害への対応について、町と関係機関などが連携した協力態勢づくりに努めます。
災害対応におけるデジタル技術の導入・活用を民間企業と連携し、災害時の迅速な情報収集など災害対応の高度化・効率化に引き続き取り組みます。また、5年計画の最終年度となる防災行政無線のデジタル化に伴う工事については、1億4千8百万円となります。今後も計画的な維持管理を実施し、町民の皆様が安心して暮らせるよう努めます。
道路改良事業においては、1億9千2百万円を計上しています。災害時に坂下と坂上を結ぶ避難用道路として、中道伊郷名線を継続事業として実施するほか、藍ヶ江線など4路線の事業を実施します。また、災害の防止、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成などの観点から無電柱化事業を推進していきます。
既設の町道各路線の適切な維持改善を図るため、長寿命化修繕計画に基づいた道路修繕を行うほか、地域住民の利便性、安全性、観光振興、産業振興に考慮しながら、道路維持管理事業に取り組みます。
庁舎管理事業については、安全かつ衛生的で持続可能な公衆衛生環境の維持管理に努め、感染症などの拡大防止に取り組みます。また、供用開始から10年を経過し、設備保全及び除草費用などの維持管理コストの増大という課題を踏まえ、経費削減を目指すと同時に、安心・安全な環境整備に取り組みます。
町営住宅事業については、中之郷に粥倉団地を建設する予算2億5千百万円を計上しています。
「八丈町公営住宅等長寿命化計画」に基づき、計画的な更新及び適切な修繕を行い、八丈町基本構想の理念に基づき、入居者が健康で文化的な生活を送ることが出来るように、良質な町営住宅運営を目指します。
財産管理事業については、町の財政状況が厳しさを増していく中、総合的な財産管理コストの削減を図りつつ、未利用財産の活用又は処分の方法を全庁横断的に検討していきます。
各地域の消防団員が少なくなっていくなか、女性消防団員の入団は増えてきております。今回の中之郷埋立処分場火災におきましても、多くの消防団員の方にご協力いただき、感謝しています。
令和6年度では三根分団ポンプ車の車両更新のため、2千7百万円を計上しております。老朽化が懸念される車両にあっては計画的に更新を図り、災害対応に支障が生じないよう努めます。
防火水槽整備事業として、耐震性貯水槽を2基新設します。また、消防本部の車庫建設事業として2千5百万円の予算を計上しています。今後も火災発生時の消火活動に支障が生じないように努めます。
水道事業は、安全、安心な水を供給するため、老朽化した管路や施設の更新を行います。浄化槽事業は、自然環境の保全と生活環境の向上のため、合併処理浄化槽の普及率向上の啓発活動を図っていきます。
好調な観光貸切の需要に対応しながら、乗合事業、貸切事業共に安全な運行に努めます。
基本構想の「生活」の項目では、「町民の支え合いによる、いたわりの気持ちがあふれるあたたかい町」の実現について示しています。
令和3年度から5年度までの継続事業で実施した、八丈町クリーンセンターは総額39億5千万円で令和6年度から供用開始となります。
長期間にわたり安全かつ安定的なごみ処理が出来る施設として、八丈町に合致した廃棄物の適正な処理を図るとともに、廃棄物の発生抑制への啓発活動を引き続き実施します。
また、伐採木の処理につきましては、町民の皆様にご不便をおかけすることとなり、誠に申し訳なく思っています。今後、適正な処理方法について、早急に取り組みます。
大量発生し生活環境に甚大な影響を及ぼしているアシジロヒラフシアリ対策として、薬品代として1千5百万円を計上しています。令和6年度も引き続き一斉防除試験を島内全域にて実施していきます。有効な効果を得るためには、町民の皆様のご協力が必要不可欠となりますので、ご協力を賜りますようお願いします。
また、ヤンバルトサカヤスデやアズマヒキガエルなどの外来生物対策にも引き続き取り組みます。
子育て世帯のニーズに対応し、適正で安全な保育運営の充実を図ります。
保育園に勤務する保育補助員を対象とした資格取得のための補助(助成)制度を継続するとともに、保育士の確保に努めます。
子育て応援拠点として、妊娠から子育て期まで親子に寄り添う支援を総合的・継続的に実施します。
物価高により厳しい状況にある低所得者への支援として、「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を活用し、様々な臨時特別給付金支給事務を円滑に執行します。
高齢者がこれまで培った知識、経験を活かし、「地域を支える担い手」として活躍できるように、シルバー人材センターの運営や外出の機会のきっかけとなる老人クラブなどの活動を支援します。
第9期介護保険事業計画に基づき、高齢者が暮らし慣れた島の中でいきいきと安心した生活が送れるよう、健康寿命の延伸となるフレイル予防や認知症予防活動の取り組みを、関係機関とともに適切に対応していきます。
関係機関と連携し、適切なサービスや医療給付の提供に努めるとともに、より実態に即した支援を行うため、障がいを抱える方の現状や課題、ニーズを反映した障がい福祉を一層推進します。また障がい者などの災害時避難行動要支援者の把握と個別避難計画作成への取り組みを進めます。
定期予防接種について安定的な運営を図るとともに、新型コロナワクチン接種について、国の動向を注視しながら、医療機関と連携を取り円滑に実施できるよう取り組みます。
島外医療機関への通院交通費助成について、難病患者などへの助成回数を拡大し、2千万円の予算を計上しております。また、がん患者のウィッグなど購入費の一部助成を継続して実施します。
妊産婦や子供たちへの切れ目のない支援の継続と、養育者の負担軽減を図るための家事育児サポート事業の充実を目指します。また、がん検診や健康相談などを引き続き実施します。
ふれあいの湯」が開業30周年を迎えます。70周年記念事業と合わせた計画も立てています。町民の皆様の健康増進や観光資源として快適に利用できる施設運営に努め、合理的な施設管理を検討しながら計画的に施設の改修整備を実施します。
町立八丈病院が掲げる「患者様に寄り添い、地域に根差した持続可能な医療を提供し、患者様の家庭、社会復帰への支援を包括して行う」という理念のもと、医療従事者の確保に努め医療レベルの維持を継続します。また、救急医療と島外医療機関との適切な連携により安心感を与える医療を提供します。
第二種感染症指定医療機関として感染症対策に全力で取り組みます。
基本構想の「文化・教育」の項目では、「離島という地域特性を特徴として捉え、文化の香り高い町」の実現について示しています。
富士中学校校舎及び給食センターなどの教育関連施設の整備を今後の八丈町のまちづくりの構想に連携させて進めていきます。
子供たちの健全な成長を支える学校給食について、子育て世帯を支援するため、令和6年1月から3月までの給食費を無償としましたが、令和6年度食材費として4千百万円を計上しておりますが、引き続き無償化を行います。
国の文化財に指定されている歴史民俗資料館は再開に向けて、6億8千4百万円を計上しております。本館、新館の耐震補強工事や展示ホールの整備を進めていきます。
また、収蔵物展示のための展示工事、外構整備工事を行います。
町民の学習やコミュニティ活動、スポーツ活動を支援するため、社会教育施設及びスポーツ施設の環境整備に努めます。
町制施行70周年事業として、團伊玖磨記念コンサートでは1千5百万円の予算を計上しています。
團伊玖磨氏が作曲して世界的に愛され親しまれている「夕鶴」を八丈町の子供たちが参加する記念公演として行います。
基本構想の「産業」の項目では、いきいきとした町づくりのため、地域経済の原動力である、各種産業の振興」について示しています。
基本計画では、農業基盤整備、農業者支援、富士牧野の整備などについて示しています。
総合戦略の目標数値を累計から単年度の年間目標にすることで、検証、改善を年度ごとに実施できるようにするほか、成果をより具体的に事業に反映できるよう改めます。
新規就農者の確保として「八丈町農業担い手育成研修センター」の第8期生を1名受け入れます。
研修センターでは、農業者の生産力向上に繋がる取り組みである農業DX技術を取り入れた施設整備を継続して実施するための予算4千7百万円を計上しています。
農地の利用促進を図るため、農業委員会との連携強化に努めるとともに、地域の農業者との話合いにより目指すべき将来農地利用を明確化する地域計画を農業経営強化促進法の改正に沿って作成し、更なる農地の集約化に向けた取り組みを行います。
また、農地基盤整備では、三根河尻水路の改修工事で9千2百万円や農地防災による中之郷銚子の口ため池改修工事2億2百万円を計上し、継続して行います。
畜産DX事業では、2億円の予算を計上しています。電気・通信のインフラ整備と牛舎の整備を行い、牛体管理を遠隔で行う事で省力化と高品質化を目指します。
基本計画で掲げている基盤整備や担い手確保について総合戦略での評価方法の見直しを行い、より具体的な評価により成果に繋げるよう取り組みを行います。
水産振興では、漁業経営の安定化を図るため、上架用船台や漁船給油システム整備の予算3千3百万円を計上し、継続的な支援を実施します。
後継者対策では、就業体験事業による新規就業者の募集のほか生産者への支援を通じて、新規就業者の育成・確保に引き続き努めます。
商工振興については、夏まつりなどコロナ禍前に行っていた各種事業の再開を中心に、八丈町商工会が行う各種事業の実情に合わせた対策に対し支援します。
また、伝統工芸品である「黄八丈」の事業について、人材確保と生産力の向上に引き続き支援を行います。
観光振興では、旅行需要に関して団体・個人ともに回復の兆しが見えてきている中で、季節による旅行者の動向やターゲットを絞ったニーズ調査を基に八丈島が旅行先の選択肢に入るよう継続した施策を行い、効果的な観光誘致に繋がる情報発信を強化します。
更なる交流人口の増加を図るため、スポーツ合宿や企業研修などの誘致を東京都をはじめ、八丈島観光協会、八丈町商工会、八丈支庁など島内各関係機関と官民を超えて連携を図り、PRを効果的に実施します。
基本構想の「行財政・機構」の項目では、「町民と行政が一体となって地域の発展に取り組む」ことが示され、広範な分野に触れています。
基本計画では、行政のデジタル化や健全な財政運営について示しています。町税は、地域社会における様々な行政サービスを提供していくための重要な財源です。期限内納付の重要性を周知徹底し、財源の確保と納税秩序の維持に努めます。
また、自宅などからインターネットを利用した納税が可能となる、共通納税システムの利用拡大を図ります。
マイナンバーカードを含め、各種証明書などの交付に際し、本人確認を厳格に実施するとともに、個人情報の漏洩を防止し、適切な制度運用を図ります。
国民健康保険は、東京都と連携して安定的な財政運営と事務の効率化を図るとともに、適正な税負担について、丁寧な周知に努めます。
国民年金においては、制度の周知を図ります。
令和6年度は、町制施行70周年の節目の年となります。記念事業関連では2千2百万円の予算を計上しています。
この節目の年を、町民の皆様とともにお祝いし、記念の年にするため、町民の皆様にご理解ご協力いただき各種行事などを計画的に行います。
以上、令和6年度の主な施策の概要について、申し上げました。
来年度の各会計の予算額は、一般会計99億円、特別会計24億6千万円、企業会計34億8千万円、合計で約158億5千万円となります。
人口減少、少子高齢化、厳しい財政状況など、町を取り巻く情勢は厳しさが増していますが、「安全で安心なまちづくり」の先頭に立ち、町民の皆様の暮らしを守り、次の世代へと引き継いでいくため、様々な行政課題に取り組んでいく予算となっております。課題解決のため、誠心誠意で取り組んでまいります。
ここに、重ねて、議員各位ならびに町民の皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げまして、施政方針といたします。
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