八丈町長 山下奉也
令和7年3月1日 第一回八丈町議会定例会
令和7年第一回八丈町議会定例会の開催にあたり、私の町政に関する所信の一端と施策の概要を申し上げ、議員各位ならびに町民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
八丈町は、本年4月1日に町制施行70周年を迎えるにあたり、昨年からさまざまな記念事業を行なってまいりました。広報キャラクターである「ロベレニくん」記念ロゴ作成に始まり、八丈町温泉事業30周年と合わせた温泉記念事業、70周年記念表彰式などのほか12事業を実施いたしました。
今月の15日、16日には名誉町民である團伊玖磨生誕100周年に合わせ、歌劇「夕鶴」の公演があります。そして広報4月号の配布時に八丈町勢要覧70周年記念誌を発行いたします。今後も町民の皆様、企業や団体の方々と協働し、町制施行80周年、90周年、さらに100周年を迎えた時も「町民一人ひとりが幸せを感じるまち」として輝きに満ちて、発展していけるよう町政を推進してまいります。
昨年は八丈町におきましても鳥島近海における地震の影響による津波や「南海トラフ地震臨時情報」による地震・津波に備える呼び掛けを防災行政無線で8日間実施いたしました。
災害がいつどこで発生するのか、その正確な予測は、きわめて困難であると言われております。昨今の災害状況を見ますと、私たちの経験や想像をはるかに超えた災害が、常に起こり得ることを想定し、備えをしなければなりません。
町民の皆様の生命・財産を守るため、減災へ向けた意識啓発を図るため、「自助」「共助」「公助」を踏まえ、防災態勢をさらに強化してまいります。
令和7年度は八丈町基本計画前期の最終年度となります。前期計画を踏まえつつ、総合開発審議会へ諮問し、急速に進行する少子高齢化や人口減少への課題、SDGs(持続可能な開発目標)や自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などの課題に積極的に取り組み、デジタル技術の活用を踏まえた後期計画を策定するとともに、業務の効率化や事務負担の軽減を図り、業務や組織体制の見直しを行い多様な地域課題の解決に努めていきたいと思っております。
町の基幹産業である農業、漁業、観光業などでも、デジタル技術を活用することで新たな発展に繋げられるよう、東京都や関係機関各所と連携を図り、取り組んでまいります。また、今後も産業の発展のため、後継者の育成、必要な基盤整備等については継続して支援を行ってまいります。
また、新庁舎となって11年が経過しますが、これまで町民の皆様から庁舎や役場のあり方について、様々な声が寄せられております。子どもからお年寄りまで、町民の皆様が親しみのある庁舎、役場となるよう整備を進めてまいります。
基本構想に沿って、「都市基盤」「生活」「文化・教育」「産業」「行財政・機構」と施策を分類しておりますので、この項目に従い主要な施策について申し上げます。
基本構想の「都市基盤」の項目では、「独特の気候、風土や人の営みなどの特性に立脚し、みどり豊かな町で住み続けられる環境」の整備について示しています。
公共施設、温泉運営、島内交通など様々な町の課題に対し、係長級で組織された「地域創生プロジェクトチーム」を中心に、デジタル領域を意識した分野横断的な解決策の立案に取り組みます。また、八盛隊の活用拡大を図り、新たな地域活性化施策を実施していきます。
将来の展開も見据えた防災DX・観光DX・行政DXなどの各種施策を、関係機関、関係企業と協働し、新技術の活用に向けて、前向きに検討を進めながら取り組んでいきます。また、業務のデジタル化を進め、住民サービスの向上と事務の効率化を図ります。
移住定住事業の促進を図るため、八盛隊で構成した「八丈島移住サポーター」による移住相談、また空き家対策に向けた調査を進め、更なる受入れ態勢の強化に取り組みます。
「八丈島クリーンアイランド構想」の効果検証を踏まえ、島本位であることを重要視し、より多くの町民の意見を反映した「エネルギービジョン」の策定に取り組みます。
防災行政無線のデジタル化につきましては、令和2年度より令和6年度までの5年間の継続事業により総工費約7億4千万円で整備が完了します。
多様化する自然災害において、地震・津波・風水害などの情報を防災行政無線を活用し、住民の方へ伝達することで安全安心なくらしの確保に努めていきます。
今後も町と関係機関などが連携した協力態勢づくりを進め、デジタル技術の導入・活用を民間企業と連携し、災害時の迅速な情報収集など災害対応の高度化・効率化に引き続き取り組みます。
道路改良事業においては、3億1千5百万円を計上しています。災害時に坂下と坂上を結ぶ避難用道路として、中道伊郷名線を継続事業として実施するほか、藍ヶ江線など4路線の事業を実施します。また、災害の防止、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成などの観点から無電柱化事業を推進していきます。
既設の町道各路線の適切な維持改善を図るため、長寿命化修繕計画に基づいた道路修繕を行うほか、地域住民の利便性、安全性、観光振興、産業振興に考慮しながら、道路維持管理事業に取り組んでいきます。
庁舎管理事業については、子供・長寿・居場所区市町村包括補助事業を活用し、住民の皆様の「居場所」づくりを整備する予算として2千百万円を計上しています。
施設の経年による維持管理コストの増大という課題もありますが、経費削減を目指すと同時に整備を進め、安全かつ衛生的な公衆衛生環境の維持管理に努めつつ、住民の皆様の「居場所」づくりに取り組みます。
町営住宅事業については、「八丈町公営住宅等長寿命化計画」に基づき、計画的な更新及び適切な修繕を行います。八丈町基本構想の理念に基づき、入居者が健康で文化的な生活を送ることが出来るように、良質な町営住宅運営を目指します。
財産管理事業については、町の財政状況が厳しさを増していく中、総合的な財産管理コストの低減を図りつつ、未利用財産の活用又は処分の方法を全庁横断的に検討していきます。
消防本部では、老朽化した消防ポンプ自動車の更新に5千6百万円を予算計上し、八丈町に適した車両の製作を行い災害対応力の更なる向上に努めます。
消防団については、女性消防団員の増加に伴い、消防団詰所の女性用トイレの増築や外壁の修繕工事など、7百万円の予算計上をしています。消防団施設の維持整備に向けた取り組みを引き続き進めていきます。また、可搬消防ポンプの更新など消防団の装備の充実強化にも努め、積極的に町の防災態勢の強化を図ります。
10月18日に開催される「第53回東京都消防操法大会・ポンプ車操法の部」に八丈町消防団が島しょ地区代表として出場するため、訓練費用や消防操法資機材整備に1千5百万円の予算を計上しています。
消防施設については、設置から10年目を迎える「消防救急デジタル無線設備」の安定稼働を図るため、末吉基地局の通信鉄塔補修工事を行います。また、町消防本部庁舎及び車庫建設に向けた基本設計・地盤調査などに3千3百万円の予算計上を行い、災害発生時に消防活動の拠点となる施設の整備を推進します。
水道事業は、老朽化した管路や施設の更新を計画的に行い、安全、安心な水の供給に努めます。
浄化槽事業は、自然環境の保全と生活環境の向上のため、合併処理浄化槽の普及率向上の啓発活動を図っていきます。
観光誘致活動を継続的に行い、観光貸切の需要に対応しながら、乗合事業、貸切事業ともに安全な運行に努めます。
基本構想の「生活」の項目では、「町民の支え合いによる、いたわりの気持ちがあふれるあたたかい町」の実現について示しています。
ガラス及び伐採木を対象とした新リサイクルセンター建設に向け、旧クリーンセンターの解体工事に係る土壌汚染調査業務として1千3百万円を計上しています。
令和6年度から供用開始しました新クリーンセンターは、長期間にわたり安全かつ安定的なごみ処理が出来る施設として、適正な運転・維持管理に努めます。
汚泥再生処理センターでは、し尿・浄化槽汚泥や給食センター等から排出される生ごみの堆肥化を引き続き実施します。
八丈町に合致した廃棄物の適正な処理を図るとともに、廃棄物の発生抑制への啓発活動を図っていきます。
大量発生し、生活環境に甚大な影響を及ぼしているアシジロヒラフシアリ対策として、薬品代2千2百万円を計上しています。令和7年度も引き続き一斉防除試験を島内全域にて実施します。
有効な効果を得るためには、町民の皆様のご協力が必要不可欠となりますので、ご協力をお願いします。
また、ヤンバルトサカヤスデやアズマヒキガエルなどの外来生物対策にも引き続き取り組みます。
あおぞら保育園のエアコン設備を更新するほか老朽化による修繕を実施します。
子育て世帯のニーズに対応し、適正で安全な保育運営の充実を図ります。
保育園に勤務する保育補助員を対象とした資格取得のための補助(助成)制度を継続するとともに、保育士の確保に努めます。
子育て応援拠点として、妊娠から子育て期まで親子に寄り添う支援を総合的・継続的に実施します。
物価高により厳しい状況にある低所得者へ「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を活用し、支援するとともに給付金支給事務を円滑に執行します。
高齢者がこれまで培った知識、経験を活かし、「地域を支える担い手」として活躍できるように、シルバー人材センターの運営や外出の機会のきっかけとなる老人クラブ等の活動を支援します。
第9期介護保険事業計画に基づき、高齢者が暮らし慣れた島の中でいきいきと安心した生活が送れるよう、健康寿命の延伸となるフレイル予防や認知症予防活動の取り組みを、関係機関とともに適切に対応していきます。
関係機関と連携し、適切なサービスや医療給付の提供に努めるとともに、第7期障がい者福祉計画に基づき、障がいのある方の現状や課題、ニーズを反映した障がい福祉を一層推進します。
定期予防接種について安定的な運営を図るとともに、その他の予防接種については国や都の動向を注視しながら、医療機関と連携を取り円滑に実施できるよう取り組みます。
島外医療機関への通院交通費の一部助成に1千7百万円、がん患者のウィッグ等購入費の一部助成に20 万円を計上し、継続して実施します。
妊娠された方や子供たちの健康と発育環境を守るべく、切れ目のない支援を継続し、健診や面談などを安定的にできるよう努めます。その中で1カ月児健診費用の助成を開始し、家事育児サポート事業の拡大充実を目指します。
がん検診や健康相談などを引き続き実施し受診率の向上を目指します。また、島内で実施する胃のがん検診については、レントゲンから精度の高い内視鏡に変更します。
温泉事業においては、1億1千5百万円を計上しています。町民の皆様の福祉向上や観光資源として快適に利用できる施設運営に努めます。
ふれあいの湯、やすらぎの湯、みはらしの湯については、事業開始から25 年以上経過しており、老朽化による修繕が増えているため、令和7年度に老朽化調査を実施し、今後の合理的な施設管理を検討しながら計画的に施設の改修整備を実施します。
町立八丈病院が掲げる「患者様に寄り添い、地域に根差した持続可能な医療を提供し、患者様の家庭、社会復帰への支援を包括して行う」という理念の元、医療従事者の確保に努め医療レベルの維持を継続します。また、救急医療と島外医療機関との適切な連携により安心感を与える医療を提供します。
第二種感染症指定医療機関として感染症対策に全力で取り組みます。
基本構想の「文化・教育」の項目では、「離島という地域特性を特徴として捉え、文化の香り高い町」の実現について示しています。
築29年経過し、老朽化が進んでいる三根小学校屋内運動場の屋根防水工事を行います。
大賀郷中学校においては、生徒や利用者が快適に使用できるようトイレの洋式化を実施します。
また、子供たちの安全や施設の適正管理のため全小・中学校の屋外に防犯カメラを設置します。
物価高騰に伴う食材費の値上げ分も含め、保護者の負担軽減を図るため、児童・生徒の給食費無償化(補助)を継続します。
令和4年度に着工した八丈島歴史民俗資料館耐震改修工事が、昨年末に完了しました。本年10月1日のリニューアルオープンに向け、展示制作及び外構工事を行います。
国登録有形文化財の建造物を地域の財産として活用し、貴重な資料の展示、公開及び情報を発信することで、郷土愛を育み、八丈町の活性化につなげます。
基本構想の「産業」の項目では、「いきいきとした町づくりのため、地域経済の原動力である、各種産業の振興」について示しています。
基本計画では、農業基盤整備、農業者支援、富士牧野の整備等について示しています。
新規就農者の確保として「八丈町農業担い手育成研修センター」の第9期生を3名受け入れます。
研修センターでは、管理棟建設に1億5千万円を計上し、研修の充実に繋げるとともに、昨年までに整備した農業DXハウスを用いて、技術をより効率的に活用できるよう、研修生による運用実績を研修センターに訪れる農業者へ周知するほか、積極的な情報発信を行います。
農地の利用促進を図るため、策定した地域計画を基に農業委員会との更なる連携強化を図り、農地の集約化に向けた取り組みを行います。
また、農地基盤整備では、三根河尻水路の改修工事で9千4百万円、農地防災による中之郷銚子の口ため池改修工事では、令和6年度の繰越額1億9千9百万円に加え令和7 年度予算で7千2百万円を計上し、継続して事業を行います。
畜産DX事業に4千万を計上し、造成工事と分娩検知システムの構築を図ります。
また、素牛の選定や受精卵移植などを活用し、牛の高品質化を目指します。
水産振興では、基盤整備としてフォークリフトの導入に6百万円や漁船廃船基金への出捐金2千万円を計上し、漁業経営の安定化を図る支援を継続します。
後継者対策では、就業体験事業による新規就業者の募集のほか生産者への支援を通じて、新規就業者の育成・確保に引き続き務めます。
商工振興については、人口が減少している中で実施可能な方法で行う夏まつりなど各種事業に対して実情に合った形で支援します。
物流センター事業では、建て替えに向け規模や立地に関する調査を実施します。
また、伝統工芸品である「黄八丈」の事業について、人材確保と生産力の向上に引き続き支援を行います。
観光振興では、絶え間なく変化する旅行需要のニーズに対応できるよう、関係機関と協働し、八丈島公式インスタグラムなどのSNS による情報発信と八丈島公式観光アプリなどを活用し旅行消費額の増加を図ります。
また、観光DXにより得た情報やデータを関係機関と共有することで、島内事業者のサービスと観光客の満足度を向上させ、リピーターの創出や新たな観光客誘致に努めます。
継続的な取組では、夏期だけではなく、年間を通じて八丈島が旅行先の選択肢に入るようネット集客事業とクーポン事業に43,000 千円を計上し、観光資源である温泉やザトウクジラの活用を「地域創生プロジェクトチーム」からの提案を基に推進していきます。
基本構想の「行財政・機構」の項目では、「町民と行政が一体となって地域の発展に取り組む」ことが示され、広範な分野に触れています。
基本計画では、行政のデジタル化や健全な財政運営について示しています。町税は、地域社会における様々な行政サービスを提供していくための重要な財源です。期限内納付の重要性を周知徹底し、財源の確保と納税秩序の維持に努めます。
マイナンバーカードを含め、各種証明書等の交付に際し、本人確認を厳格に実施するとともに、個人情報の漏洩を防止し、適切な制度運用を図っていきます。
国民健康保険は、東京都と連携して安定的な財政運営と事務の効率化を図るとともに、適正な税負担について、丁寧な周知に努めます。
国民年金においては、制度の周知を図っていきます。
令和7年度の主な施策の概要について、申し上げました。
来年度の各会計の予算額は、一般会計91億円、特別会計24億1千万円、企業会計35億円、合計で約150億1千万円となります。
基本構想に掲げる「ともに支えあうあたたかい町」のため、世代、性別、思想などの多様性を尊重し、町民、地域、企業や団体、行政が協働することで、相互の知恵を集結し、新たなまちの魅力や価値を共に創りあげる「共創」の未来を目指し、取り組んでまいります。
議員各位ならびに町民の皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げまして、施政方針といたします。
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